SNS初心者講座

"ネットサーフィンって最近聞かない? それはインターネットが日常になった証拠です。 あなたの日常にインターネットの新たな可能性をお届けします!"

e結社に乗ろう、e列挙に載せよう
e列挙

\'08年11月27日付の日経産業新聞、p.04で、エンタテインメントプラスの服部睦部長が、同社のチケット販売サイト「e+(イープラス)」の新しい利用形態について説明している。≪公演主催者なら誰でも簡単に公演チケットを全国に告知し、販売できるサービスを始めました。(中略)最近は中高年バンドや地域密着で活躍する劇団が増え、アマチュアの活動も見逃せない市場になっています。これまで”手売り”と呼ばれる対面販売やメール予約に頼っていた中小の公演の需要を取り込みたいと思います」(中略)

専用フォームに公演の内容や開催日、料金などを入力するだけで登録できます。チラシの画像や公演のPRなどを添付すれば、宣伝の場としても活用できます。利用料金は1公演1万500円。≫−−。

着眼点がいいと思う。ガラスケースやコルクボードのように収容容積が有限の場では、効率が他より悪いために切り捨てられるロングテールの部分でも、収容容積が非常に大きく、収容1件当たりのコストが小さい仕組みになら、場の提供側としては、のせることができる。

もちろん、費用を払って収容してもらう側がペイするかどうかは、収容してもらう側の事情で大きく変わる。しかし、地域の飲食店探しサイトの「ぐるなび」のように、特定の行為をするときに検索することが根付き、かつ、同種のウェブサイトで3番目以内ぐらいに残れれば、需要と供給とのマッチング率が、かなりのレベルまであがる。そこを検索するのが当たり前になってくる。

そうなるため、サービス主催者側としては、網羅性をどこまであげ、地域の各種公演の相当部分がデジタルネットメディア上に列挙できるか否かが、キーになる。網羅性高く列挙できるようになれば、公演主催者側としては、そこに載せないと潜在観客の目に止まらなくなるから、お金を払ってでもその列挙リストにのせようということになる。


オンラインからオフラインへ

東京本社版にも載っているかどうかが西日本ではわからないのだが、朝日新聞夕刊に『ネットはいま』という企画記事が連載されている。\'08年11月25日付のタイトルは「ファンがいる場所」である。「たむらぱん」というシンガーソングライターのライブの様子を追っている。≪ライブを企画、運営したのは米国発のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、「マイスペース」。彼女はこのサイトを通じ、昨年10月にメジャーデビューの夢をかなえた。

同サイトでは、学校や職場の仲間、音楽の趣味などが一緒の利用者同士が「フレンド」として登録。それぞれのプロフィル(自己紹介)ページなどで交流する。(中略)(引用者注:マイスペースの)海外版では、楽曲や写真を公開し、口コミで人気が出たミュージシャンが数多くいるという。SNSでファンを探そう。(中略)

07年1月から、見ず知らずの会員300人ほどに毎日、「自分の曲を聴いて下さい」と(引用者注:相手のプロフィールに合わせて1人1人違う文面の)メッセージをつけ、フレンドの申請を続けた。(中略)約4ヵ月、フレンドが1万人を超えた。1けたも珍しくなかったライブの観客数が100人に。≫−−。


e結社

冒頭のロングテール狙いのビジネスとは、若干異なる。メジャーになるための名前と実力周知の経路として、コンテスト、オーディション、ストリートミュージシャン、ライブハウス周りなど既存チャネル以外に、SNSが新たに加わったということだからだ。ロングテールではなくて、メジャーについての動きである。しかし、周知のための空間的移動、媒体(チラシ)複製の労力とコストが、大幅に小さくなりうる−−という点で、2つの話はつながる。

朝日新聞の記事はいう。≪インディーズを含めた国内ミュージシャンは20万組ともいわれる。同サイト(引用者注:マイスペース日本版)には、プロアマ約8万5千組が登録。すでに10組以上がメジャーデビューを果たした。≫−−。メジャーになれる人数となりたい人数とを比較したとき、門が非常に狭い点では、従来とそれほど違いがあるわけではない。

SNSが優れているのは、周知チャネルであると同時に、ファンとのコミュニケーション継続チャネルでもあることである。マイスペースのオジー・井上部長がいう。≪「音楽雑誌やCD店を使った従来のプロモーションは一過性で終わりがち」(中略)「SNSでは、ブログや楽曲にいつでも接触できる。継続的にファンをさがしていける」≫−−。

井上部長のコメントのこの部分だけ切り取ると、コミュニケーション継続チャネルとしても評価しているが、周知チャネルとしてより高く評価しているようだ。筆者(夕里)は、コミュニケーション継続チャネルとしての意義を買いたい。特定のミュージシャンという、デジタルネットワーク上の一種の結社。ファン同士の書き込みのやりとりを読んだ人たちが、むずむずして、この結社に入ってしゃべりたい−−と思うようになれば、めっけもんだ。

もちろん、拘束力は弱く、1人が複数の結社に同時に入っているのが当たり前である。路線の方面は自分の趣味で大体決まっているが、30分乗っては降りて、別のアーティストの車両に移る−−。結社より列車にたとえる方が、実際の感情に合っているかもしれない。


リアル列車に乗ろう

地域で小劇場での公演やライブを探す際に、冒頭のエンタテインメントプラスのウェブサイトを検索することが、習慣づくかどうかは、わからない。習慣づいてビジネスが大きくなったら大きくなったで悩みの種は、また出てくる。

\'08年11月27日付の日経産業新聞、p.07。「ぐるなび、忘年会PRで新機軸 ネット出て駅・電車に集中投下」−−。同社は、≪過去最大規模、前年比2倍の広告費用を投じ、年末の飲食店繁忙期を盛り上げる忘年会告知広告を展開している。(中略)ネット企業では珍しく、ポスター広告という昔ながらの手法で忘年会の楽しさを訴えかけた。今回初めて全国の主要都市で駅のほか電車やバスの車内に広告を掲載している。≫−−と記事はいう。

目的は、競合サイトを引き離してトップを走り続けることにあるようだ。≪競合サイトの猛追をかわし、ぐるなびのサイト内で飲食店を探すといった行動パターンを根付かせることができるか。≫−−。

ビジネスが大きくなり、関係者の数が増えると、維持のために一定程度は拡大を続けなければならなくなる。利益率がよいことがわかれば、小回りの利く競合が参入してくる。もちろんビジネス一般、何においてそれがいえるのだが、ロングテール狙いのビジネスでは、できるだけ掌から漏れないように落ち穂を拾って集積しなければならない。トップを走り続ける重要性が、強迫的ともいえる切実さで迫ってくる。


広告モデルは難しいか

営利の営みと非営利の営みとが、分けやすい分野であれば、たとえば、学校の音楽会は無料で掲載してあげて、営利の公演主催者からは、1公演1万500円をもらうといった形にして、網羅性をあげる手はある。しかし、エンタテインメントプラスの今回のビジネスのターゲットは、もともとアマチュアだから、線引きが難しいだろう。

公演主催者からの費用でなく、他のお金で回す、広告モデルのようなビジネスモデルは、ありうるだろうか。楽器メーカーや音響メーカーやメジャーのレコード会社の数は少なく、これ以上知名度をあげる必要はないから、寄付のような感覚でないかぎり、お金を出す動機は薄い。

公演の場所を貸す劇場、公演会場の収入は観客が多くても少なくても基本的に変わらないから、彼らがお金を出す動機は薄い。


1周したらループ線路で次フェーズ

アマチュアの劇団や楽団−−古い表現だ−−にとって、公演を周知し、チケットを売り、お金を回収し、チケットを届ける手間は重い。忙しい職業人には、お金を払ってでも手間を省きたいという動機がある。サイト利用料が適正であれば、利用が広がる可能性はある。

課題は、競合が出てきて利用料のダンピングが起きてしまうことがあるかどうかであろう。土地勘がなくて、この点、筆者には、よくわからない。サイバー世界の一種の列車を走らせていたはずの「ぐるなび」が、リアル列車に乗るぐらいだから、ビジネスが数年でぐるっと1周すると、フェーズが変わってしまっている可能性がある。

(終わり)

http://blog.goo.ne.jp/yuuzato/e/c8ecc5573200a729b3923de6200cf9c8

ページの先頭へ戻る